採用活動の負担が年々増加する中、採用代行(RPO)を導入する企業が急増しています。しかし「採用代行とは何なのか」「費用はいくらかかるのか」「自社に本当に必要なのか」と迷う採用担当者も少なくありません。
本記事では、採用代行の基本から人材紹介との使い分け、費用相場、失敗しない選び方までを実務視点で徹底解説します。
- 採用代行(RPO)とは何か、定義と他サービスとの違い
- 委託できる業務内容と費用相場(月額・成果報酬・従量課金)
- 採用代行(RPO)のメリット・デメリット
- 採用代行に向いている企業と向いていない企業の特徴
採用代行(RPO)とは?3分でわかる基本知識

まずは、採用代行(RPO)とは何なのでしょうか?採用代行の定義から、その特徴まで、基本を解説していきます。
採用代行(RPO)の定義
採用代行(RPO)とは、Recruitment Process Outsourcingの略称で、企業の採用業務の一部または全部を外部の専門企業に委託するサービスです。
重要なのは、採用代行が提供するのは「業務の代行」であり、「人材の紹介」ではないという点です。採用活動に必要な実務作業(求人原稿作成、応募者対応、面接日程調整、書類選考など)を、採用のプロフェッショナルが代わりに実行します。
近年、採用難の深刻化や採用業務の複雑化に伴い、採用代行を導入する企業が増加しています。特に採用担当者が不足している中小企業や、採用人数が多い企業での導入が進んでいます。
採用代行が注目される3つの背景
採用代行サービスが注目される背景には、企業を取り巻く採用環境の大きな変化があります。
①採用難の深刻化
少子高齢化による労働力人口の減少により、多くの業界で人材確保が困難になっています。有効求人倍率は高止まりしており、特に新卒市場では売り手市場が続いています。優秀な人材を確保するには、より戦略的で効率的な採用活動が不可欠です。
②採用業務の複雑化
採用手段が多様化し、求人媒体だけでなく、SNS採用、リファラル採用、ダイレクトリクルーティングなど、様々な手法を組み合わせる必要が出てきました。それぞれの手法に専門的なノウハウが求められ、採用担当者の業務負荷は増大する一方です。
③採用担当者の不足
中小企業では専任の採用担当者を配置できず、人事や総務の担当者が他業務と兼任しているケースが多く見られます。また、採用担当者自体の採用も難しく、適切な人材を確保できないという悪循環に陥っている企業も少なくありません。
採用代行の2つのタイプ
採用代行サービスは、大きく分けて2つのタイプがあります。
①採用プロセス代行型
採用業務そのものを外部に委託するタイプです。母集団形成、選考事務、内定者フォローなど、採用プロセスの一部または全部を採用代行会社が主体的に実行します。契約形態は業務委託契約となり、企業は成果物やサービスの提供を受けます。
②リクルーター派遣型
採用活動を行う人材を企業に派遣するタイプです。派遣されたリクルーターは企業の指揮命令下で業務を行います。契約形態は人材派遣契約となり、企業側で業務のマネジメントが必要です。
| 項目 | 採用プロセス代行型 | リクルーター派遣型 |
| 業務の進め方 | 委託先が主体的に実行 | 自社の指揮命令下で実行 |
| 契約形態 | 業務委託契約 | 人材派遣契約 |
| 費用体系 | 月額固定 or 成果報酬 | 時給×時間 or 月額 |
| メリット | ノウハウ活用、業務効率化 | 社内リソースの補完 |
| デメリット | 連携コストが発生 | 自社でマネジメント必要 |
多くの企業が導入しているのは「採用プロセス代行型」です。採用のプロフェッショナルが持つノウハウを活用でき、業務効率化の効果が高いためです。
採用代行・人材紹介・人材派遣・BPO・採用コンサルの違い

採用支援サービスには様々な種類があり、それぞれ役割や特徴が異なります。自社に最適なサービスを選ぶためには、各サービスの違いを正しく理解することが重要です。
5つのサービスの全体像
採用に関わる外部サービスは、主に以下の5つに分類されます。
- 採用代行(RPO):採用業務のプロセスを代行
- 人材紹介:候補者を紹介するサービス
- 人材派遣:労働力を派遣するサービス
- BPO:業務プロセス全体を外部委託
- 採用コンサルティング:採用戦略の立案・アドバイス
それぞれが採用活動の異なる部分を支援するため、自社の課題に応じて使い分けることが重要です。
採用代行(RPO)とは
先ほども解説しましたが、採用代行は、採用業務のプロセスそのものを外部に委託するサービスです。
対応範囲は母集団形成から内定者フォローまで広範囲にわたります。求人原稿の作成、応募者対応、面接日程調整、書類選考、内定者フォローなど、採用活動に必要な実務をプロフェッショナルが代行します。
契約形態は業務委託契約で、費用体系は月額固定型、成果報酬型、従量課金型の3つが一般的です。
向いている企業は、採用担当のリソースが不足している、専門ノウハウが不足している、年間の採用人数が多い企業などです。
人材紹介(有料職業紹介)とは
人材紹介は、企業が求める人材を紹介会社のデータベースから探し出し、企業に紹介するサービスです。
対応範囲は候補者の推薦から入社までの支援が中心です。紹介会社が保有する候補者データベースの中から、企業の求める条件に合う人材をマッチングし、面接の設定や条件交渉をサポートします。
契約形態は紹介契約で、費用体系は成果報酬型が基本です。採用が決定した場合のみ費用が発生し、理論年収の30〜35%が相場となっています。
向いている企業は、即戦力人材がすぐに欲しい、採用難易度が高い職種(エンジニア、専門職、管理職など)を採用したい企業です。
人材派遣とは
人材派遣は、労働力そのものを企業に派遣するサービスです。
対応範囲は派遣社員として就業することです。派遣会社に雇用されている労働者が、派遣先企業で業務を行います。採用支援ではなく、労働力の提供が目的です。
契約形態は労働者派遣契約で、費用体系は時給×稼働時間が基本です。
向いている企業は、短期的な人手不足を補いたい、繁閑差が大きい業務がある企業です。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは
BPOは、業務プロセス全体を外部に委託するサービスです。
対応範囲は採用以外も含む広範な業務です。経理、人事、総務、カスタマーサポートなど、企業の定型的な業務プロセスを丸ごと外部に委託します。
実は、採用代行(RPO)はBPOの一種です。BPOの中でも採用業務に特化したものがRPOと呼ばれています。
費用体系は業務範囲により変動します。
向いている企業は、複数の業務をまとめて効率化したい、コア業務に経営資源を集中したい企業です。
採用コンサルティングとは
採用コンサルティングは、採用戦略の立案やアドバイスを行うサービスです。
対応範囲は採用計画の策定、採用手法の設計、課題分析などの戦略面が中心です。重要なのは、コンサルタントは実務を行わない点です。戦略を立案し、企業側が実行します。
契約形態はコンサルティング契約で、費用体系はプロジェクト型(50万円〜数百万円)が一般的です。
向いている企業は、採用戦略そのものを見直したい、採用ノウハウを内製化したい企業です。
それぞれのサービスを使い分けるポイント
自社の採用課題によって、最適なサービスは異なります。
【母集団形成が課題の場合】
採用代行または人材紹介を検討しましょう。求人媒体の運用や応募者対応に工数がかかる場合は採用代行、即座に候補者を紹介してほしい場合は人材紹介が適しています。
【選考プロセスが非効率な場合】
採用代行が最適です。日程調整、書類選考、データ入力などの定型業務を外部に委託することで、採用担当者はコア業務に集中できます。
【即戦力が今すぐ欲しい場合】
人材紹介を活用しましょう。紹介会社のデータベースとネットワークを活用することで、スピーディーに候補者と接点を持つことができます。
【採用戦略から見直したい場合】
まず採用コンサルティングで戦略を立案し、その後に採用代行で実行するという順序が効果的です。
【短期的な人手不足の場合】
人材派遣を活用しましょう。繁忙期だけ労働力を補完したい場合に適しています。
採用代行に依頼できる業務内容

採用代行サービスでは、採用活動のほぼすべてのプロセスを委託することができます。ここでは、採用フローの各段階で委託可能な業務を詳しく解説します。
採用フローと委託可能業務の全体像
採用活動は大きく5つの段階に分けられます。
- 採用計画・戦略立案:採用要件の定義、スケジュール策定
- 母集団形成:求人掲載、応募者の獲得
- 選考・面接:書類選考、面接の実施
- 内定・クロージング:内定通知、条件交渉
- 入社後フォロー:オンボーディング、定着支援
採用代行では、これらすべての段階で業務を委託できます。企業の状況に応じて、特定の段階だけを委託することも、すべてを包括的に委託することも可能です。
①採用計画・戦略立案
採用活動の土台となる計画・戦略を策定する段階です。
- 採用要件の整理・明確化:どんな人材が必要かを言語化
- 採用ペルソナの設計:ターゲット人材の具体的なイメージづくり
- 採用スケジュールの策定:いつまでに何名採用するかの計画
- 採用予算の設計:媒体費、イベント費などの予算策定
- 採用KPIの設定:応募数、選考通過率などの目標指標設定
- 採用手段の選定:どの求人媒体や手法を使うかの判断
- 競合他社の採用動向調査:同業他社の採用状況のリサーチ
- 求人原稿の企画・構成案作成:訴求ポイントの整理
- 採用ブランディング戦略の立案:企業の魅力の打ち出し方
- 採用管理システム(ATS)の選定・導入支援:採用業務を効率化するツールの導入
採用代行会社は多数の企業支援実績があるため、業界や職種に応じた効果的な採用戦略を提案できます。
特に初めての採用活動や、採用がうまくいっていない企業にとって、この段階からの支援は非常に効果的です。
②母集団形成
応募者を集める段階です。採用代行で最も委託されることが多いフェーズです。
- 求人原稿の作成:魅力的な求人文の執筆
- 求人媒体への掲載・運用:複数媒体の管理、効果測定
- 自社採用サイトの企画・制作:採用専用Webサイトの構築
- Indeed・Googleしごと検索への最適化:検索エンジンからの流入増加
- SNS(X、Instagram、TikTok)での採用広報:SNSを活用した情報発信
- ダイレクトリクルーティングの運用:スカウトメールの作成・送信
- リファラル採用制度の設計・運用:社員紹介制度の構築
- 合同企業説明会への出展サポート:ブース運営、学生対応
- 大学訪問・キャリアセンター対応:大学への営業活動
- インターンシップの企画・運営:学生向けプログラムの実施
- 採用イベントの企画・実施:会社説明会、座談会の運営
- 採用動画の企画・制作:会社紹介動画、社員インタビュー動画
- 採用パンフレット・資料の制作:印刷物の企画・デザイン
- 応募者データベースの構築:過去の応募者情報の管理
- 母集団形成の効果測定・改善提案:どの施策が効果的かの分析
特に新卒採用では、大学訪問や合同説明会への出展など、工数のかかる業務が多数発生します。
これらを採用代行に委託することで、採用担当者の負担を大幅に軽減できます。
③選考・面接
応募者を選考し、面接を実施する段階です。定型業務が多く、採用代行の効果が高いフェーズです。
- 応募者への初回連絡:サンキューメールの送信
- 書類選考の代行:履歴書・職務経歴書のスクリーニング
- 面接日程の調整:候補者との日程調整、確定連絡
- 面接会場の手配:会議室の予約、案内図の送付
- Web面接システムの設定・案内:ZoomなどのURL発行、操作案内
- リマインドメールの送信:面接前日の確認連絡
- 一次面接の実施:面接官として候補者を評価
- 面接評価シートの作成・集計:評価基準の統一、結果の取りまとめ
- 適性検査の実施・結果分析:SPI等の実施運営
- 不合格者への連絡・フィードバック:不採用通知の送付
- 選考状況の進捗管理:各候補者のステータス管理
- 採用管理システム(ATS)への入力・更新:データの入力・更新作業
応募者対応や日程調整は、採用担当者の時間を最も奪う業務の一つです。特に応募者が多い場合、これらの定型業務だけで一日が終わってしまうこともあります。
採用代行に委託することで、採用担当者は面接や惹きつけといったコア業務に集中できるようになります。
④内定・クロージング
内定を出し、承諾を得る段階です。内定辞退を防ぐための重要なフェーズになります。
- 内定通知書の作成・送付:内定通知の文書作成
- 内定者への連絡・条件交渉のサポート:給与、勤務地などの調整
- オファー面談の設定・同席:内定者との最終面談
- 内定承諾書の回収:必要書類の受領確認
- 入社書類の案内・回収:入社に必要な書類の案内
- 内定者フォロー:定期的な連絡、不安の解消
- 内定辞退の防止施策:内定者の動機づけ維持
- 内定者向けSNSコミュニティの運営:内定者同士の交流促進
特に新卒採用では、内定から入社まで約1年間あります。この期間、定期的にコミュニケーションを取り、内定者の不安を解消することが内定辞退を防ぐ鍵となります。
採用代行会社は、効果的な内定者フォロー施策のノウハウを持っているため、内定承諾率の向上が期待できます。
⑤入社後フォロー(オンボーディング)
入社後の定着を支援する段階です。
- 入社手続きのサポート:入社書類の確認、社内システムの登録
- 新入社員研修の企画・運営:導入研修のプログラム設計
- OJT計画の策定支援:配属後の育成計画づくり
- 早期離職防止のフォローアップ面談:入社後の定期面談
- 定着率の測定・分析:離職率の把握、改善提案
せっかく採用しても、早期に離職してしまっては採用コストが無駄になります。入社後のフォローまで含めて支援することで、採用から定着までを一貫してサポートできます。
コア業務とノンコア業務の区分
採用業務は、コア業務とノンコア業務に分類されます。
コア業務とは、企業の採用成否に直結し、社内で判断すべき業務です。例えば、最終面接、惹きつけ(魅力付け)、採用要件の定義などが該当します。これらは企業の文化や価値観が反映されるため、基本的には自社で行うべきです。
ノンコア業務とは、定型的で時間がかかるものの、高度な判断を必要としない業務です。例えば、日程調整、データ入力、応募者への定型連絡などが該当します。これらは外部に委託することで効率化できます。
多くの企業は、まずノンコア業務から採用代行への委託を開始します。効果を確認した上で、段階的にコア業務の一部(一次面接など)も委託していくという流れが一般的です。
自社の状況に応じて、どの業務を委託し、どの業務を自社で保持するかを適切に判断することが重要です。
採用代行の費用相場と3つの料金体系

採用代行を検討する際、多くの企業が最も気になるのが「費用」です。
ここでは、採用代行の料金体系と具体的な費用相場を詳しく解説します。
採用代行の3つの料金体系
採用代行の料金体系は、大きく分けて3つのタイプがあります。
①月額固定型
毎月一定の金額を支払う方式です。予算管理がしやすく、長期的な採用支援を受けやすいメリットがあります。
②成果報酬型
採用が決定した場合のみ費用が発生する方式です。初期費用がかからず、採用できなければ費用が発生しないため、リスクが低い点が特徴です。
③従量課金型(スポット型)
業務の実施量に応じて費用が発生する方式です。特定の業務だけを委託したい場合や、繁閑に応じて柔軟に調整したい場合に適しています。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の採用計画や予算に合わせて選択することが重要です。
月額固定型の費用相場
月額固定型は、最も一般的な料金体系です。
費用相場:月額10万円~80万円
メリット
・予算管理がしやすい
・長期的な採用支援を受けられる
・採用人数が増えても追加費用が発生しにくい
デメリット
・採用活動が少ない時期でもコストが発生する
・短期での解約が難しい場合がある
向いている企業
・通年採用を行っている
・年間の採用人数が多い(5名以上)
・安定的に採用活動を行いたい
新卒採用は、大学訪問や合同説明会への出展など、工数のかかる業務が多いため、中途採用よりも費用が高くなる場合もあります。
成果報酬型の費用相場
成果報酬型は、採用が決定した場合のみ費用が発生する方式です。
費用相場:理論年収の20~30%
メリット
・初期費用が不要
・採用できなければ費用が発生しない
・リスクが低い
デメリット
・採用単価が高くなる可能性がある
・採用人数が多いと総額が膨らむ
向いている企業
・採用人数が少ない(年間1~2名)
・予算の見通しが立ちにくい
・まずは試してみたい
成果報酬型の採用代行は、人材紹介と料金体系が似ています。ただし、費用相場には違いがあります。
- 人材紹介:理論年収の30~35%
- 採用代行(成果報酬型):理論年収の20~30%
採用代行の成果報酬型は、人材紹介よりもやや安価な傾向があります。これは、人材紹介が「候補者の紹介」という成果に対して報酬を支払うのに対し、採用代行は「採用プロセス全体の支援」に対して報酬を支払うためです。
具体的な金額例としては、年収250万円の新卒採用の場合、採用代行(成果報酬型)で50万円~75万円程度が相場となります。
従量課金型(スポット型)の費用相場
従量課金型は、業務の実施量に応じて費用が発生する方式です。
費用相場:業務内容により1万円~20万円/件
メリット
・必要な業務だけ依頼できる
・繁閑に応じて調整可能
・試験的に利用しやすい
デメリット
・業務量が多いと割高になる
・都度の発注手続きが必要
向いている企業
・特定業務だけ依頼したい
・採用活動に波がある
・まずは試してみたい
従量課金型は、「まずは求人原稿作成だけ依頼してみる」「繁忙期の3ヶ月だけ面接日程調整を依頼する」といった柔軟な使い方ができます。
以下に各業務の費用相場を一覧にまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
業務別の従量課金費用相場
| 業務内容 | 費用相場 |
| 求人原稿作成 | 3万円~10万円/件 |
| 書類選考代行 | 500円~2,000円/件 |
| 面接日程調整 | 1,000円~3,000円/件 |
| 一次面接代行 | 1万円~3万円/件 |
| 内定者フォロー | 5万円~15万円/月 |
採用代行を導入する7つのメリット

採用代行を導入することで、企業は様々なメリットを得ることができます。ここでは、実務的な視点から7つの主要なメリットを解説します。
①採用担当者の業務負荷を大幅に削減
採用活動には、応募者対応、日程調整、データ入力など、多くの定型業務が発生します。特に応募数が多い場合、これらの業務だけで採用担当者の時間が圧迫されてしまいます。
採用代行を活用すれば、こうしたノンコア業務を外部に委託できるため、採用担当者はコア業務に集中できるようになります。
特に中小企業では、採用担当者が他業務と兼任しているケースが多く、採用活動に十分な時間を割けないという課題があります。採用代行の導入により、限られたリソースを最大限に活用できるようになります。
②採用活動のスピードアップ
採用市場は年々競争が激しくなっており、スピードが採用成否を分ける重要な要素になっています。
採用代行会社は採用業務に特化したプロフェッショナル集団です。応募者対応や日程調整などを迅速に処理できるため、採用プロセス全体のスピードが向上します。
特に優秀な候補者ほど複数の企業から内定を得ているため、対応スピードの差が採用の成否を分けます。
応募から面接設定まで1週間かかっていたものが、採用代行の導入でさらに短縮できれば、競合他社に先んじて候補者を確保できる可能性が高まります。
採用代行を活用することで、このスピード競争に勝つことができるようになるのです。
③専門ノウハウ・最新トレンドを活用できる
採用代行会社は、様々な業界・企業の採用支援を行ってきた豊富な実績があります。そのため、効果的な求人原稿の書き方、応募者の見極め方、内定辞退を防ぐフォロー方法など、実践的なノウハウを持っています。
特に採用経験が浅い企業や、これまで採用がうまくいっていなかった企業にとって、こうした専門知識を自社の採用活動に取り入れることで、採用精度の向上や内定承諾率のアップが期待できます。
また、採用代行会社は常に最新の採用市場動向や手法をキャッチアップしているため、時代に合わせた採用活動を実現できます。
④採用コストの適正化
一見すると外部委託はコストがかかるように思えますが、実際には採用担当者の人件費削減や採用期間の短縮により、トータルコストが下がるケースも多くあります。
例えば、新規に採用担当者を1名雇用する場合、採用費から給与、教育コスト、社会保険料などで年間500万円~700万円ほど必要になります。それが、採用代行を月額12万円で12ヶ月使用した場合は、年間120万円に大幅に費用を減らすことができます。
採用代行の方が、専任担当者を雇用するよりも安価になる可能性があるのです。
また、採用期間が長引くと、欠員による機会損失や残業代の増加など、見えないコストが発生します。採用代行によってスピードアップすれば、これらのコストを削減できます。
特に中小企業では、採用専任の担当者を配置できず、他業務との兼任による非効率が発生しがちです。採用代行を活用することで、限られたリソースをより効果的に配分できるようになります。
⑤採用品質の向上
採用代行を活用することで、採用のミスマッチを減らし、より自社に合った人材を採用できるようになります。
採用代行会社の担当者は、多数の候補者を見てきた経験があります。履歴書・職務経歴書から候補者の適性を見極める精度が高く、面接に進めるべき候補者を適切に選別できます。
また、面接まで代行を依頼する場合、採用代行会社は構造化面接(あらかじめ決められた質問項目と評価基準で面接を行う手法)を活用します。これにより、面接官による評価のブレを軽減し、より客観的な判断ができます。
そして、最終的に応募数、選考通過率、内定承諾率などのデータを分析し、採用プロセスのどこに課題があるかを可視化します。データに基づいた改善提案により、継続的に採用品質を向上させることができます。
⑥全社統一的な採用活動が可能
複数の拠点や部署がある企業では、それぞれの現場で独自に採用活動を行っているケースがあります。その結果、採用基準がバラバラになったり、採用の質にばらつきが出たりする課題があります。
採用代行を活用することで、全社統一の採用基準やプロセスを構築し、どの拠点でも同じ品質の採用活動を実現できます。
特に全国に数十店舗の支店を持つ小売業や飲食業などの業態の場合、採用代行を導入することで、各店舗でバラバラだった採用活動を統一することができるので、採用品質の向上と業務効率化の効果を感じやすいです。
⑦Z世代・若手層への対応力向上
新卒採用において、Z世代とのコミュニケーションは重要な課題です。
Z世代は以下のような独自のコミュニケーション特性を持っています。
- SNSネイティブ(情報収集の主な手段がSNS)
- カジュアルなコミュニケーションを好む
- 透明性・オープン性を重視
- 働く意味・意義を重視
- 従来の「企業→学生」の一方的なコミュニケーションでは響かない
採用代行会社は、こうしたZ世代の特性を理解し、SNSを活用した採用活動や、カジュアル面談の実施など、効果的なコミュニケーション手法を持っています。
特に新卒採用においては、従来の採用担当者では対応が難しいZ世代とのコミュニケーションを、採用代行会社のノウハウで補完できます。
採用代行の3つのデメリットと対処法

採用代行には多くのメリットがある一方で、デメリットや注意すべき点も存在します。ここでは誠実に課題を提示し、その対処法までセットで解説します。
①社内にノウハウが蓄積されにくい
採用業務を外部に委託すると、採用のノウハウやスキルが社内に蓄積されにくくなるリスクがあります。
将来的に採用を内製化したいと考えている企業にとって、これは大きな課題です。採用代行に依存し続けることで、いざ自社で採用活動を行おうとした際に、何から始めればいいのか分からないという状況に陥る可能性があります。
①定期的な報告会でノウハウを共有
採用代行会社から、月次レポートや定例会議で進捗状況やノウハウを共有してもらいましょう。「なぜこの施策を実行したのか」「どのような効果があったのか」といった背景まで理解することで、自社にノウハウが蓄積されます。
②OJT形式で自社担当者も業務に同席
採用代行会社に完全に任せるのではなく、一次面接や内定者フォローなどに自社の担当者も同席することで、実践的なスキルを学ぶことができます。
③段階的な内製化計画を立てる
最初は包括的に委託し、徐々に業務を自社に取り戻していくという段階的な計画を立てることも有効です。1年目は全体を委託、2年目はノンコア業務のみ委託、3年目は完全内製化、といったロードマップを描きましょう。
④ドキュメント化を依頼する
採用フロー、求人原稿のテンプレート、面接評価シートなど、採用活動で使用したツールやマニュアルをドキュメント化してもらい、納品物として受け取ることで、将来の内製化に活用できます。
②自社の魅力や文化が伝わりにくい可能性
外部の人間が応募者対応や面接を行う場合、自社の企業文化や職場の雰囲気が十分に伝わらないリスクがあります。
特に新卒採用では、学生は企業の「人」や「雰囲気」を重視する傾向が強いため、採用代行会社の担当者だけが対応すると、企業の本当の魅力が伝わらず、内定辞退につながる可能性があります。
また、候補者側も「この会社の社員と直接話せないのは不安」と感じることがあります。
①最終面接は必ず自社の社員が実施
一次面接は採用代行に委託しても、最終面接は必ず自社の経営者や配属予定部署の責任者が実施しましょう。候補者にとって、実際に一緒に働く人と話すことは、入社意欲を高める重要な機会です。
②採用代行会社への事前インプットを徹底
企業理念、ビジョン、カルチャー、働き方の特徴など、自社の魅力を採用代行会社に詳しく伝えましょう。定期的に社内イベントや会議に採用代行会社の担当者を招待し、リアルな企業文化を体感してもらうことも効果的です。
③社員との接点を設ける
採用プロセスの中に、社員との座談会、職場見学、一日体験など、候補者が実際の社員と接する機会を設けましょう。採用代行は事務的なプロセスを担当し、「人」の部分は自社で対応するという役割分担が理想的です。
④採用ブランディングツールを整備
会社紹介動画、社員インタビュー記事、採用パンフレットなど、企業の魅力を伝えるツールを整備しましょう。採用代行会社がこれらのツールを使って候補者に情報を提供することで、企業文化を効果的に伝えることができます。
③委託費用の発生とコミュニケーションコスト
当然ながら、採用代行を利用するには費用がかかります。特に月額固定型の場合、採用活動が少ない時期でもコストが発生します。
また、外部に業務を委託する以上、採用代行会社との連携・情報共有に時間がかかります。特に導入初期は、業務フローの擦り合わせや認識の統一に多くの時間を要することがあります。
①費用対効果を定期的に検証
採用代行の導入効果を定量的に測定しましょう。
- 採用単価:総コスト÷採用人数
- 採用期間:応募から入社までの平均日数
- 工数削減効果:採用担当者の業務時間削減量
これらの指標をモニタリングし、費用に見合った効果が出ているかを確認します。効果が不十分な場合は、委託する業務範囲の見直しや、他の採用代行会社への切り替えも検討しましょう。
②役割分担・報告ルールを明確化
契約前に、以下の点を明確に定めましょう。
- どの業務を採用代行が担当し、どの業務を自社が担当するか
- 報告の頻度(週次、月次など)とフォーマット
- 緊急時の連絡体制
- 意思決定のプロセス(どのレベルの判断は自社が行うか)
曖昧な役割分担は、トラブルの原因になります。契約書に業務範囲を明文化し、双方の認識をすり合わせることが重要です。
③定例会議の設定
週1回または隔週で定例会議を設定し、進捗状況の共有、課題の洗い出し、改善策の検討を行いましょう。対面が難しい場合は、オンライン会議でも構いません。
定期的なコミュニケーションにより、認識のズレを早期に発見・修正でき、結果的にコミュニケーションコストを削減できます。
④SLA(Service Level Agreement)の締結
SLAとは、サービス品質保証のことです。例えば、以下のような品質基準を契約に盛り込みます。
- 応募者への初回連絡は24時間以内
- 面接日程調整は48時間以内に確定
- 月次レポートは翌月5営業日以内に提出
SLAを締結することで、サービス品質が担保され、期待と実態のギャップを防ぐことができます。
採用代行が向いている企業・向いていない企業

採用代行は有効なサービスですが、すべての企業に適しているわけではありません。自社の状況を見極め、導入の是非を判断することが重要です。
採用代行が向いている企業の特徴
以下のいずれかに当てはまる企業は、採用代行の導入を前向きに検討しましょう。
①採用担当者のリソースが不足している
中小企業では、人事や総務の担当者が採用業務を兼任しているケースが多く見られます。他業務と並行して採用活動を行うため、どちらも中途半端になってしまうという課題があります。
また、採用専任の担当者を配置したくても、適切な人材を採用できないという企業も少なくありません。採用担当者自体の採用が難しいという悪循環に陥っているケースです。
このような企業は、採用代行を活用することで、限られたリソースを効果的に活用できます。
②採用人数が多く、業務量が膨大
新卒を年間10名以上採用する企業や、複数職種を同時並行で採用する企業では、応募者対応や面接日程調整だけで採用担当者の時間が圧迫されます。
採用人数が多いほど、定型業務の量も比例して増えるため、採用代行による業務効率化の効果が大きくなります。また、前述の費用シミュレーションで示した通り、年間3名以上採用する場合は、人材紹介よりも採用代行の方が費用面でも有利になる傾向があります。
③採用ノウハウ・経験が不足している
初めて新卒採用を行う企業、何年も採用活動をしていなかった企業、これまでの採用がうまくいっていない企業などは、採用のノウハウが不足しています。
「求人を出しても応募が来ない」「面接で何を聞けばいいか分からない」「内定を出しても辞退される」といった悩みを抱えている場合、採用のプロフェッショナルである採用代行会社のノウハウを活用することで、採用活動の質を短期間で向上させることができます。
④内定辞退率が高く、改善したい
せっかく内定を出しても、候補者に辞退されてしまうという課題を抱えている企業は少なくありません。
内定辞退の原因は様々ですが、内定者フォローの不足が大きな要因の一つです。採用代行会社は、効果的な内定者フォロー施策のノウハウを持っているため、内定承諾率の改善が期待できます。
特に新卒採用では、内定から入社まで約1年間あります。この期間の継続的なコミュニケーションが内定辞退を防ぐ鍵となります。
採用代行が向いていない企業の特徴
一方、以下のような状態の場合は採用代行の導入は慎重に検討した方が良いでしょう。
①採用人数が年間1〜2名程度
年間の採用人数が非常に少ない場合、月額固定型の採用代行は費用対効果が合わない可能性があります。年間1〜2名の採用であれば、人材紹介の方が費用面でも、リスク面でも有利です。成果報酬型のため、採用できなければ費用が発生しないという安心感もあります。
②採用ノウハウを内製化したい
将来的に採用活動を自社で完結させたいと考えている企業は、採用代行への依存度を高めすぎないよう注意が必要です。
この場合、採用代行よりも「採用コンサルティング」の方が適しています。コンサルタントは実務を代行せず、戦略立案やアドバイスに徹するため、自社にノウハウが蓄積されやすくなります。
③企業文化・カルチャーフィットを最重視
自社の企業文化やカルチャーフィットを何よりも重視する企業では、外部の人間による選考では判断が難しい場合があります。
この場合、書類選考や日程調整などの定型業務だけを採用代行に委託し、面接はすべて自社で行うという役割分担が適しています。
④予算が非常に限られている
月額10万円以上の費用が厳しい企業は、採用代行の導入は難しいかもしれません。
この場合、まずは部分的な委託から検討しましょう。例えば、求人原稿の作成だけを従量課金で依頼する、繁忙期の3ヶ月だけ面接日程調整を依頼する、といった使い方です。
あるいは、成果報酬型の人材紹介など、初期費用が少ないサービスから始めることも一つの選択肢です。
よくある質問(FAQ)

採用代行に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 採用代行は違法ではないですか?
A. 合法です。
職業安定法第36条および第60条により、採用業務の一部を外部に委託することは認められています。企業が採用代行会社と業務委託契約を結び、採用プロセスの支援を受けることは、法律上何の問題もありません。
ただし、労働者供給事業に該当する形態(採用代行会社が雇用している労働者を、実質的に企業の指揮命令下で働かせる)は違法となります。適切な契約形態(業務委託契約)で行う必要があります。
採用代行会社を選ぶ際は、法令遵守の体制が整っているか、過去にトラブルがないかを確認しましょう。
Q2. 最低契約期間はどのくらいですか?
A. 一般的に3〜12ヶ月です。
採用代行会社によって異なりますが、多くの場合、最低3ヶ月〜6ヶ月の契約期間が設定されています。採用活動には一定の期間が必要であり、短期間では効果を測定できないためです。
長期契約(1年以上)の場合、月額料金が割引されることもあります。
一方、従量課金型(スポット型)であれば、特定の業務だけを単発で依頼することも可能です。まずは試してみたいという企業には、スポット利用から始めることをおすすめします。
Q3. 途中で解約できますか?
A. 契約条件によります。
契約書に解約条件(解約予告期間、違約金の有無等)が記載されています。契約前に必ず確認しましょう。
一般的には、1〜3ヶ月前の予告が必要です。最低契約期間内の解約の場合、違約金が発生することもあります。
トラブルを避けるためには、契約前に以下の点を明確にしておくことが重要です。
- 最低契約期間
- 解約予告期間
- 違約金の有無と金額
- 中途解約が認められる条件
Q4. 人材紹介と採用代行、どちらを選ぶべきですか?
A. 採用人数と課題によります。
年間1〜2名の採用なら人材紹介、3名以上で業務効率化が課題なら採用代行がおすすめです。
詳しくは「8. 人材紹介 vs 採用代行|どちらを選ぶべき?」をご覧ください。
Q5. 小規模企業でも利用できますか?
A. 利用できます。
従業員10名未満の企業でも採用代行の導入実績は多数あります。
月額8万円〜のプランや、従量課金型なら少額から利用可能です。まずは部分的な委託(求人原稿作成だけ、面接日程調整だけなど)から始めることをおすすめします。
小規模企業こそ、限られたリソースを効果的に活用するために、採用代行が有効です。
Q6. 委託する業務範囲は柔軟に変更できますか?
A. 多くの場合、変更可能です。
契約期間中でも、業務範囲を追加したり削減したりすることができる採用代行会社が多いです。ただし、業務範囲の変更に伴い、料金も変更となります。
定例会議の中で、「この業務も追加で依頼したい」「この業務は自社で対応できるようになったので外したい」といった相談をすることができます。
柔軟な対応が可能かどうかは、契約前に確認しておきましょう。
Q7. 採用代行会社はどのように選べばいいですか?
A. 7つのチェックポイントで比較しましょう。
- 実績・得意領域:自社と同じ業界・規模での支援実績
- 料金体系:自社の予算と採用計画に合った料金プラン
- セキュリティ対策:Pマーク、ISMS等の取得状況
- コミュニケーション体制:専任担当、レスポンスの速さ
- 報告の仕組み:月次レポート、効果測定の方法
- SLAの有無:サービス品質の保証内容
- 自社課題との適合性:自社の課題を解決できる提案か
複数社から提案を受け、これらの観点で総合的に評価することをおすすめします。
まとめ

採用代行(RPO)とは、採用業務の一部または全部を外部の専門企業に委託するサービスです。採用担当者の業務負荷軽減、採用活動のスピードアップ、専門ノウハウの活用など、多くのメリットがあります。
ただし、すべての企業に採用代行が最適とは限りません。
最も重要なのは、自社の採用課題を正しく理解し、最適なサービスを選ぶことです。
まずは採用課題を把握し、適切なサービスを活用しましょう。