採用活動の負担を軽減するため、フリーランスに採用代行を業務委託する企業が増えています。しかし「フリーランスへの委託は違法ではないのか」「法人のサービスと何が違うのか」「本当に任せて大丈夫なのか」といった不安を抱える採用担当者も少なくありません。
実際、採用代行は職業安定法で「委託募集」に該当し、一定の条件下では許可が必要になります。また、フリーランスは個人で業務を請け負うため、法人サービスとは契約形態や費用相場、対応の柔軟性などが大きく異なります。
本記事では、フリーランスへの採用代行委託における違法性の有無、法人サービスとの具体的な違い、メリットとデメリット、費用相場、そして失敗しないための選び方まで網羅的に解説します。自社に最適な採用代行の選択肢を見極めるための判断材料としてご活用ください。
フリーランスの採用代行(RPO)とは?

フリーランスの採用代行とは、企業の採用業務を個人事業主として請け負う専門家に委託するサービスです。RPO(Recruitment Process Outsourcing)の一形態であり、法人が提供する採用代行サービスとは異なり、個人と直接契約を結ぶ点が大きな特徴です。
近年、採用市場では人材獲得競争が激化しており、特に中小企業では採用専任の担当者を置く余裕がなく、他の業務と兼任しながら採用活動を進めるケースが大半です。こうした背景から、採用業務の一部または全部を外部の専門家に委託する動きが広がっています。
フリーランスの採用代行は、人材業界や企業の人事部門で豊富な経験を積んだ専門家が独立して活動しているケースが多く、法人サービスと比べて担当者を直接選べる点や、業務内容や契約期間を柔軟に調整できる点が魅力です。
フリーランスへの採用代行委託は違法?法的要件を解説
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フリーランスへの採用代行委託を検討する際、最も気になるのが「違法にならないか」という点でしょう。結論から言えば、適切な手続きを踏めば違法ではありません。しかし、職業安定法に基づく一定の要件を満たす必要があります。
採用代行は「委託募集」に該当し許可が必要
厚生労働省が発行する募集・求人業務取扱要領によれば、採用代行サービスは職業安定法第36条の「委託募集」に区分されます。委託募集とは、労働者を雇用しようとする企業が、自社の社員以外の者に労働者の募集業務を委託する形態を指します。
報酬を支払って第三者に採用業務を委託する場合、厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可を得る必要があります。報酬を支払わない場合でも、厚生労働大臣への届出が必要です。つまり、フリーランスに採用代行を依頼する企業側も、委託を受けるフリーランス側も、それぞれ適切な許可や届出を行わなければなりません。
許可が不要なケースもある
ただし、すべての採用業務の委託が「委託募集」に該当するわけではありません。例えば、応募者対応や適性検査の実施といった事務手続きのみを外部に委託する場合は、委託募集とはみなされず、許可は不要です。
また、書類選考や面接についても、自社側で採用基準を明確に設定したうえで、一部の事務作業のみを委託する場合は委託募集に該当しません。重要なのは「募集業務そのもの」を委託しているかどうかという点です。
ただし、委託業務の範囲や内容によっては許可の要否の判断が難しいケースもあります。自社が委託しようとしている業務が委託募集に当てはまるか不安な場合は、都道府県労働局に問い合わせて確認することをおすすめします。
フリーランスへの委託で注意すべき違法リスク
特に注意が必要なのは、有料職業紹介の許可を持たないフリーランスに「採用に関するすべての業務」を委託するケースです。この場合、違法とみなされる可能性が高くなります。
有料職業紹介事業の許可を得るには、資本金500万円以上や専用の面談室の設置といった条件を満たす必要があります。個人事業主であるフリーランスの多くは、こうした条件をクリアしていません。そのため、許可を持たないフリーランスに全面的に採用業務を委託すると、職業安定法違反となるリスがあります。
無許可で有料職業紹介を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。依頼した企業側も、無許可と知りながら委託した場合は共犯とみなされ、同様の罰則に問われる可能性があります。
フリーランスに採用代行を依頼する際は、厚生労働省の許可事業者検索サイトで有料職業紹介の許可を有しているか必ず確認しましょう。許可を持たない場合は、委託する業務範囲を事務作業に限定するなど、違法リスクを回避する対策が必要です。
フリーランスと法人の採用代行の違い

フリーランスと法人の採用代行サービスは、どちらも採用業務を外部に委託する点では共通していますが、契約形態や費用、対応の柔軟性などに大きな違いがあります。ここでは4つの比較軸で整理します。
| 比較項目 | フリーランス | 法人RPO |
| 契約形態 | 個人契約 | 企業契約 |
| 担当者選定 | 直接指名可能 | 企業が選定 |
| 費用相場 | 月20~30万円 | 月10~90万円 |
| 柔軟性 | 高い | 標準化されたプラン |
| 稼働安定性 | 個人依存 | 体制で対応 |
| 強み | 個人の専門性 | 組織のノウハウ |
まず契約対象の違いです。フリーランスは個人との契約となるため、直接その人物の経歴やスキルを確認したうえで契約できます。一方、法人サービスは企業との契約となり、担当者は契約先の企業が選定します。そのため、希望する経験やスキルを持たない担当者が配置されるリスクがあります。
次に稼働時間や対応の安定性です。フリーランスは個人で対応するため、体調不良や個人的な事情で稼働できなくなった場合、代替要員がいません。法人サービスであれば、担当者の急な欠勤や退職があっても別の担当者が対応できる体制が整っているため、採用業務が滞るリスクは低くなります。
業務内容の柔軟性については、フリーランスは個人の裁量で動けるため、業務範囲や稼働時間、契約期間などを柔軟に調整しやすい傾向があります。法人サービスはパッケージ化されたプランが用意されていることが多く、企業側のニーズに完全に合致しない場合もあります。
費用面では、フリーランスは月額20~30万円程度が相場とされています。法人サービスは月額10~90万円と幅が広く、委託する業務内容によって大きく変動します。フリーランスは必要な業務だけをスポットで依頼できるため、無駄なコストが発生しにくい点がメリットです。
フリーランスに採用代行を委託する4つのメリット

フリーランスへの採用代行委託には、法人サービスにはない独自のメリットがあります。ここでは主な4つのメリットを解説します。
実績・経験から担当者を直接選べる
フリーランスに依頼する最大のメリットは、担当者の経歴や実績を事前に確認したうえで、自社のニーズに合った人材を直接選べる点です。法人サービスでは企業側が担当者を選定するため、配置された担当者が自社の業界や職種に精通していないケースもあります。
フリーランスは基本的に一人で業務を担うため、選んだ担当者が最後まで直接対応してくれる可能性が高く、ミスマッチのリスクを軽減できます。特定の業界での採用経験が豊富な人材や、特定の職種の採用に強みを持つ人材など、自社の採用課題に合わせた専門家を選べる点は大きな強みです。
柔軟な対応が期待できる
フリーランスは個人で活動しているため、企業のニーズに応じた柔軟な対応が期待できます。業務内容や稼働時間、勤務場所などを個別に調整しやすく、企業側の状況に合わせたきめ細かな対応が可能です。
例えば、採用活動の繁忙期だけ週5日常駐してもらい、閑散期は週1日のリモート対応に切り替えるといった調整もできます。法人サービスでは社内ルールに則って業務を進めるため、急な変更や特別な対応が難しい場合がありますが、フリーランスは直接企業と契約するため制約が少なく、イレギュラーな依頼にも迅速に応じられる傾向があります。
必要な期間だけスポットで依頼できる
フリーランスは必要な期間だけピンポイントで業務を依頼できる点も魅力です。法人サービスでは最低契約期間が3ヶ月や6ヶ月と定められているケースが多く、採用ニーズがない期間も費用が発生する可能性があります。
フリーランスであれば、新卒採用の選考時期だけ、あるいは中途採用で急な欠員が出た時だけといったスポット的な依頼が可能です。必要な時に必要な分だけ依頼できるため、採用計画に合わせた効率的なコスト管理ができます。
法人サービスより費用を抑えられる場合がある
フリーランスへの委託は、法人サービスと比較して費用を抑えられる可能性があります。フリーランスの費用相場は月額20~30万円程度とされており、週2~3日の稼働で必要な業務だけを依頼する形が一般的です。
法人サービスは月額10~90万円と幅広く、パッケージプランに不要な業務が含まれている場合もあります。フリーランスは特定の業務のみを委託できるため、無駄なコストが発生しにくく、トータルコストを削減しやすい点がメリットです。ただし、極端に相場より安い料金を提示するフリーランスは、実績や経験が不足している可能性もあるため注意が必要です。
フリーランスに採用代行を委託する5つのデメリット

フリーランスへの採用代行委託にはメリットがある一方で、法人サービスと比較した際のデメリットも存在します。委託を検討する際は、これらのリスクも十分に理解しておく必要があります。
フォローアップ体制が不十分
フリーランスは個人で業務を請け負っているため、トラブルが発生した際のフォローアップ体制が整っていません。法人サービスであれば、担当者が対応できない問題が生じた場合、上司や経営陣がサポートに入ることで円満に解決できるケースが多くあります。しかし、フリーランスの場合は担当者本人がすべての対応を行う必要があり、問題解決に時間がかかるリスクがあります。
担当者の変更や増員が困難
フリーランスは基本的に個人と契約を結ぶため、業務開始後に担当者のパフォーマンスが期待に沿わない場合でも、簡単に担当者を変更できません。また、採用活動が想定以上に忙しくなり急に人員を増やす必要が生じた場合でも、個人で活動しているため対応できるリソースに限界があります。
稼働が不安定になるリスク
フリーランスは個人での稼働となるため、体調不良や家庭の事情などで突然稼働できなくなるリスクがあります。代わりの担当者がいないため、採用業務が一時的に滞ってしまう可能性も高いです。特に候補者対応はスピード感が重要で、返信が遅れることで候補者の志望度が下がるケースもあります。
契約が突然終了する可能性
優秀なフリーランスほど多くの企業から声がかかるため、より条件の良い案件があれば、そちらを優先して契約を解除されるリスクがあります。契約が突然終了した場合、新たなフリーランスや法人サービスを探す必要があり、採用活動に支障をきたすだけでなく、時間的コストもかかります。
担当者によってスキルやサービス品質にばらつき
フリーランスは個人の能力や経験に大きく依存するため、担当者によってスキルやサービスの品質にばらつきがあります。法人サービスであれば社内教育体制があるため担当者による品質の差は少なくなりますが、フリーランスの場合は実績や経験の見極めが難しく、期待していたパフォーマンスが得られないケースもあります。
フリーランスへの採用代行委託で失敗しないための5つのポイント
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フリーランスへの採用代行委託を成功させるためには、事前の確認と準備が欠かせません。ここでは失敗を避けるための5つの重要なポイントを解説します。
実績とスキルを入念に確認する
フリーランスは個人で業務を請け負うため、契約後の担当者変更は基本的にできません。そのため、契約前に担当者の実績とスキルを入念に確認することが重要です。具体的には、採用業務の経験年数、過去に担当したプロジェクトの内容と成果、対応可能な業界や職種の専門性などを確認しましょう。
単に「人事経験10年」といった抽象的な情報だけでなく、どのような企業でどのような採用を何名実現したかなど、具体的な数値や成果まで聞き出すことが大切です。可能であれば過去のクライアントへのリファレンスチェックを行い、実際の業務遂行能力や信頼性についての意見を聞くことも有効です。
コミュニケーション能力とレスポンスの速さ
採用業務では、候補者対応のスピード感がCX(候補者体験)に大きく影響します。メールやチャットの返信が遅いと、それだけで候補者の志望度が下がったり、他社に流れてしまったりするリスクがあります。そのため、フリーランスに依頼する際は、コミュニケーション能力とレスポンスの速さを事前に確認しておくことが重要です。
契約前の面談や問い合わせの段階で、返信の速さや対応の丁寧さをチェックしましょう。また、使用するコミュニケーションツール、報告や連絡の頻度、緊急時の連絡方法なども事前に擦り合わせておくことで、業務開始後のトラブルを防げます。
有料職業紹介の許可の有無を確認する
先ほど解説した通り、有料職業紹介の許可を持たないフリーランスに、採用に関するすべての業務を委託すると、職業安定法違反となるリスクがあります。フリーランスに委託する際は、厚生労働省の許可事業者検索サイトで有料職業紹介の許可を有しているか必ず確認しましょう。
許可を持たないフリーランスに依頼する場合は、委託する業務範囲を応募者対応や書類整理などの事務作業に限定することで、違法リスクを回避できます。自社が委託しようとしている業務が委託募集に該当するか不明な場合は、都道府県労働局に問い合わせて確認することをおすすめします。
情報管理・セキュリティ体制を確認
採用業務では候補者の個人情報や企業の内部情報を取り扱うため、情報管理とセキュリティ対策が重要です。法人サービスであれば情報セキュリティ対策が整備されていることが一般的ですが、フリーランスの場合は個人のPCで作業することが多く、セキュリティ対策が不十分な可能性があります。
フリーランスに委託する際は、個人情報の取り扱いルール、使用端末の制限、アクセス権限の管理方法などを事前に確認しましょう。提供する情報は必要最小限に絞り、機密性の高い情報へのアクセスは制限するなどの対策も有効です。
業務範囲と目標を明確にすり合わせる
フリーランスは企業の外部人材であるため、自社の事業内容や組織文化への理解が浅い場合があります。求職者からはフリーランスも自社の一員として見られるため、認識のズレがあると候補者に混乱を与えたり、不信感を抱かせたりするリスクがあります。
業務開始前に、委託する業務の範囲を具体的に定義し、採用目標やKPI、評価基準などを明確に共有しましょう。また、業務開始後も定期的なミーティングを設定し、進捗確認や情報共有を密に行うことで、認識のズレを防ぎ、スムーズな業務遂行が可能になります。
フリーランスの採用代行を探せるマッチングサービス5選
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フリーランスの採用代行を探す際には、専門のマッチングサービスやクラウドソーシングサイトを活用すると効率的です。ここでは代表的なサービスを5つ紹介します。
1. CORNER(コーナー)
人事領域に特化した採用業務代行サービスで、採用業務のプロフェッショナルが多数登録しています。必要な業務を必要なタイミングで依頼できる高い柔軟性が特徴で、採用計画の策定から面接の実施、入社後のフォローアップまで、さまざまなフェーズにおいて専門家のサポートを受けられます。
2. Waris プロフェッショナル
大手企業の総合職やコンサルティングファームなどで平均15年の豊富な経験を積んだ人材に特化したサービスです。ハイクラスの人材に低コストで業務を依頼できるメリットがあり、戦略立案から実務まで対応できるリーダー的な人材も登録しています。
3. ランサーズ
国内最大級のクラウドソーシングサービスで、多数のフリーランスが登録しています。人事領域の経験者も多く、企業は自社が予定している採用プロジェクトの概要や要件を掲示することで、適切なフリーランスからの応募を募ることができます。過去の実績や評価を確認できるため、人材の見極めがしやすい点も特徴です。
4. クラウドワークス
ランサーズと並ぶ国内最大規模のクラウドソーシングサイトです。ランサーズで条件の合う人材が見つからなかった場合に、併せて活用することで、より幅広いフリーランスの中から最適な人材を見つけられます。登録者数が多いため、複数のフリーランスを比較検討しやすい点がメリットです。
5. スタッフサービス
人事職の募集件数が業界トップクラスのサービスで、フリーランスの登録希望者が多数在籍しています。複数人のフリーランスを比較検討して依頼を決めたい場合におすすめです。人事職に特化したサービスを提供しているため、専門的なスキルや知識を持つフリーランスを見つけやすい環境が整っています。
中小企業の新卒採用なら「学生による採用代行」という選択肢も
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フリーランスや法人の採用代行サービス以外に、中小企業の新卒採用では「学生による採用代行」という選択肢もあります。ここでは第三の選択肢として注目を集める学生人事について解説します。
学生人事とは?
学生人事は、学生が企業と伴走して新卒採用を支援するサービスです。フリーランスでも法人でもない新しい形の採用代行として、特に中小企業の新卒採用において効果を発揮します。
従来の採用代行サービスは中途採用やアルバイト採用も行っていることが多く、新卒採用特有の課題に対応しきれない場合がありました。学生人事は新卒採用に特化することで、企業と学生の双方の視点を理解しながら、効果的な採用活動を支援します。
学生目線だからこその強み
学生人事の最大の特徴は、Z世代の学生目線で採用活動を支援できる点です。新卒採用では、学生が「この会社で働きたい」と思えるコンテンツや情報発信が重要ですが、企業側だけでは学生の本音や興味を惹くポイントを見極めることが難しい場合があります。
学生人事では、学生が共感する採用サイトや動画、資料などのコンテンツ制作を得意としています。また、インターンシップの企画運営や内定者フォローにおいても、学生同士だからこその親近感や距離の近さを活かした支援が可能です。企業と学生の間に立ち、双方の視点を理解しながら採用活動を進められる点が大きな強みです。
まとめ

フリーランスへの採用代行委託は、適切な手続きを踏めば違法ではありませんが、職業安定法に基づく許可要件の確認が必須です。有料職業紹介の許可を持たないフリーランスへの全面委託は違法となるリスクがあるため、必ず事前に確認しましょう。
フリーランスは担当者を直接選べる点や柔軟な対応、コスト削減といったメリットがある一方、フォロー体制の不足や稼働の不安定さといったデメリットもあります。選定時は実績・スキル・コミュニケーション能力・法的許可・情報管理体制を重視することが重要です。
また、中小企業の新卒採用においては、学生目線の採用支援という選択肢も検討価値があります。採用活動は企業の未来を左右する重要な業務です。自社の採用課題やリソース、予算に合わせて、最適なパートナーを選びましょう。