新卒採用を進める際、人材紹介サービスの利用を検討している企業は少なくありません。しかし、「手数料はどのくらいかかるのか」「他の採用手法と比べて割高なのか」といった疑問を持つ採用担当者も多いのではないでしょうか。
人材紹介サービスの手数料は、採用する人材の理論年収に対して一定の料率をかけた金額となるのが一般的です。特に新卒採用においては、中途採用とは異なる手数料体系や相場感があるため、事前に正しい知識を持っておくことが重要です。
本記事では、人材紹介サービスの手数料の仕組みから相場、計算方法、さらには新卒採用特有の注意点まで、採用担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。人材紹介サービスの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
人材紹介サービスとは

人材紹介サービスとは、企業が求める人材要件を人材紹介会社に伝え、その条件に合った求職者を紹介してもらう採用支援サービスです。厚生労働大臣の許可を受けた有料職業紹介事業者が提供しており、エージェントと呼ばれることもあります。
新卒採用においても、人材紹介サービスは広く活用されています。企業は自社の求める人物像やスキル、社風に合った学生を紹介してもらえるため、母集団形成から選考までの工数を大幅に削減できます。
人材紹介サービスの最大の特徴は、成功報酬型の料金体系です。採用が決定し、入社が確定した時点で初めて手数料が発生するため、初期費用をかけずに採用活動を始められます。求人広告のように掲載料を先に支払う必要がなく、採用できなかった場合のコストリスクを抑えられる点が、多くの企業に支持されている理由です。
また、人材紹介サービスでは、単に人材を紹介するだけでなく、採用活動に関わる様々な業務を代行してくれるものもあります。求人票の作成支援、応募者の人選と推薦、面接日程の調整、合否連絡、給与などの条件交渉といった煩雑な業務を任せられるため、採用担当者は面接や採用戦略の立案といったコア業務に集中できます。
特に人手不足に悩む中小企業にとって、限られた人員で効率的に採用活動を進められる人材紹介サービスは、有力な選択肢となっています。
人材紹介サービスの手数料の仕組み

人材紹介サービスを利用する際に発生する手数料について、その基本的な仕組みを理解しておくことは、採用予算を適切に管理する上で欠かせません。ここでは、手数料が発生するタイミングや支払い条件、特殊なケースについて詳しく解説します。
基本は成功報酬型
人材紹介サービスの手数料は、ほとんどの場合、成功報酬型の料金体系を採用しています。これは、紹介された人材が実際に採用され、入社が確定した時点で初めて手数料が発生する仕組みです。
求人の依頼時や、人材の紹介を受けた時点、さらには選考を進めている段階では、一切費用がかかりません。したがって、複数の候補者と面接を行い、最終的に不採用とした場合でも、手数料は発生しないのです。
この成功報酬型の仕組みは、企業にとって大きなメリットがあります。求人広告のように先行投資が必要なく、採用できなかった場合の金銭的リスクを最小限に抑えられるためです。特に採用予算が限られている中小企業や、採用の確実性が読みにくい新卒採用において、この料金体系は非常に魅力的です。
手数料が発生するタイミング
人材紹介サービスの手数料は、紹介された人材が入社した日をもって請求が発生するのが一般的です。具体的には、入社日に出社を確認した上で、人材紹介会社から請求書が発行されます。
支払いのタイミングは人材紹介会社によって異なりますが、多くの場合、入社月の月末締め、翌月末払いという形式が採用されています。たとえば、4月1日に入社した場合、4月末に請求書が発行され、5月末までに支払いを行うという流れです。
この支払いタイミングについては、人材紹介会社との契約時に明確にしておくことが重要です。採用人数が多い場合や、入社時期が集中する新卒採用では、手数料の支払いが企業のキャッシュフローに大きな影響を与える可能性があるためです。
早期退職時の返還金制度
人材紹介サービスの多くは、紹介した人材が早期に退職した場合に備えて、返還金制度を設けています。これは、入社後短期間で退職が発生した場合、支払った手数料の一部が返金される仕組みです。
返還金の割合は、在籍期間によって変動します。一般的な返還金規定の例としては、入社後1カ月以内の退職で手数料の80%を返金、1カ月超3カ月以内で50%を返金、3カ月超6カ月以内で20%を返金といった設定がされています。
保証期間は90日から180日程度が一般的ですが、人材紹介会社によって異なります。新卒採用の場合、内定から入社までの期間が長く、入社後の早期離職リスクも中途採用に比べて高い傾向があるため、返還金規定の内容は契約前にしっかりと確認しておくべきです。
ただし、返還金制度には適用外となる条件が設定されていることもあります。たとえば、企業側の都合による解雇や、本人の病気や怪我など、やむを得ない事情による退職の場合は、返還金の対象外とされることがあります。
サーチ型の場合は着手金が発生することも
一般的な人材紹介サービスとは異なり、サーチ型やヘッドハンティング型と呼ばれるサービスでは、着手金が発生するケースがあります。
サーチ型は、人材紹介会社のデータベースに登録している求職者だけでなく、転職を考えていない潜在層も含めて、企業が求める条件に合った人材を積極的に探し出すサービスです。主に経営幹部やエグゼクティブクラス、高度な専門性を持つスペシャリストの採用に活用されます。
このタイプのサービスでは、人材を探し出すこと自体に多大な労力とコストがかかるため、契約時に手数料の一部を着手金として先払いする形式が取られることがあります。着手金は、採用が成功しなかった場合でも返還されないのが一般的です。
ただし、新卒採用においてサーチ型のサービスが利用されることは稀です。新卒採用では、人材紹介会社に登録している学生の中からマッチングを行う一般的な登録型サービスが主流であり、着手金なしの完全成功報酬型が基本となります。
人材紹介サービスの手数料の相場

人材紹介サービスを利用する際に最も気になるのが、実際にどのくらいの手数料がかかるのかという点です。手数料の相場を正しく理解しておくことで、採用予算の策定や人材紹介会社の選定がスムーズに進みます。ここでは、中途採用と新卒採用それぞれの手数料相場について詳しく解説します。
中途採用の場合は理論年収の30〜35%
中途採用における人材紹介サービスの手数料は、採用した人材の理論年収に対して30〜35%程度が相場となっています。人材紹介会社によっては、25%から40%の範囲で設定されることもありますが、多くの場合、35%前後が標準的な料率です。
理論年収とは、採用された人材が入社後1年間で受け取る想定年収のことを指します。月給に12カ月分を乗じた金額に、賞与や各種手当を加えた金額が理論年収となります。ただし、交通費や変動する残業代、インセンティブなどは含まれないのが一般的です。
たとえば、理論年収500万円の中途人材を料率35%で採用した場合、人材紹介サービスの手数料は175万円となります。理論年収600万円であれば210万円、理論年収700万円であれば245万円といったように、採用する人材の年収に応じて手数料も変動します。
近年の人手不足を背景に、特に採用難易度の高い職種やポジションでは、料率が35%を超えるケースも増えています。エンジニアや専門職、管理職クラスの採用では、40%以上の料率が設定されることも珍しくありません。
新卒採用の場合は理論年収の35〜40%程度
新卒採用における人材紹介サービスの手数料は、中途採用と比較してやや高めに設定される傾向があります。相場としては、理論年収の35〜40%程度が一般的です。
新卒採用の手数料が中途採用より高くなる理由はいくつかあります。第一に、新卒学生は社会人経験がないため、企業とのマッチング精度を高めるために、人材紹介会社側がより丁寧なカウンセリングやフォローを行う必要があることです。第二に、内定から入社までの期間が長く、その間の内定者フォローや辞退防止のサポートが必要になることも、コストアップの要因となっています。
新卒採用の場合、理論年収は初任給をベースに計算されます。たとえば、月給22万円、賞与が年間4カ月分という条件で採用した場合、理論年収は352万円となります。これに料率40%を適用すると、手数料は約141万円です。
ただし、新卒採用の手数料は、採用時期や採用人数、企業と人材紹介会社の関係性によって変動することがあります。複数名の採用を前提とした場合、料率を下げて対応してくれる人材紹介会社もあるため、交渉の余地はあります。
料率に影響を与える要因
人材紹介サービスの料率は、いくつかの要因によって変動します。まず、採用難易度が高い職種や業界では、料率が高く設定される傾向があります。IT業界のエンジニアや、専門性の高い職種では、40%以上の料率となることも珍しくありません。
また、採用するポジションのレベルによっても料率は変わります。一般的に、若手や未経験者よりも、中堅層や管理職、エグゼクティブクラスの方が料率は高くなります。これは、該当する人材の数が限られており、マッチングの難易度が高いためです。
企業と人材紹介会社の取引実績や契約内容も、料率に影響を与えます。長期的な取引関係がある場合や、年間での採用人数が多い場合は、料率を優遇してもらえることがあります。新卒採用で毎年複数名の採用を予定している企業であれば、人材紹介会社との交渉により、より有利な条件を引き出せる可能性があります。
手数料の算出方法

人材紹介サービスの手数料を正確に把握するためには、その算出方法を理解しておく必要があります。手数料の計算には、届出制手数料と上限制手数料の2つの方式があり、それぞれ計算方法が異なります。ここでは、両方の算出方法について詳しく解説します。
届出制手数料による算出
届出制手数料は、人材紹介会社が厚生労働大臣に届け出て許可を得た手数料表に基づいて料金を算出する方法です。現在、ほとんどの人材紹介会社がこの届出制手数料を採用しています。
届出制手数料の計算式は、「理論年収×料率」というシンプルなものです。料率は最大50%まで設定できますが、実際には30〜40%の範囲で設定されることが大半です。
具体的な計算例を見てみましょう。月給25万円、賞与が年間3.2カ月分、諸手当が月10万円という条件で採用した場合、理論年収は以下のように計算されます。給与が月給25万円の12カ月分で300万円、賞与が25万円の3.2カ月分で80万円、諸手当が月10万円の12カ月分で120万円となり、合計で500万円が理論年収です。
この理論年収500万円に料率35%を適用すると、手数料は175万円となります。料率40%であれば200万円です。このように、理論年収と料率さえ分かれば、簡単に手数料を算出できます。
届出制手数料の場合、手数料の請求は入社日に発生します。入社が確認された時点で請求書が発行され、契約で定められた支払期日までに支払いを行う流れです。
上限制手数料による算出
上限制手数料は、厚生労働省の規制により、採用した人材に支払われる賃金の11%を上限とする算出方法です。免税事業者の場合は10.3%が上限となります。
上限制手数料の計算式は、「6カ月間の賃金×11%」です。仮に雇用期間が1年以上であっても、計算の対象となるのは最初の6カ月間に支払われた賃金のみとなります。
たとえば、月給25万円で採用した場合、6カ月間の賃金は150万円です。これに11%を乗じると、手数料は16万5千円となります。届出制手数料と比較すると、かなり低額になることが分かります。
ただし、上限制手数料の場合、手数料の請求タイミングが届出制手数料とは異なります。上限制手数料では、実際に6カ月間の賃金を支払った後に請求が発生するため、入社から半年後に手数料の支払いが生じることになります。
現在、上限制手数料を採用している人材紹介会社は非常に少なく、大半の会社は届出制手数料を採用しています。特定の職業や特殊なケースを除き、一般的な新卒採用や中途採用では届出制手数料が適用されると考えて問題ありません。
理論年収の正しい計算方法
手数料を正確に算出するためには、理論年収を正しく計算することが重要です。理論年収に含まれる項目と含まれない項目を正確に理解しておく必要があります。
理論年収に含まれるのは、基本給、固定残業代、賞与、各種手当です。基本給は試用期間終了後の金額を12カ月分で計算します。固定残業代は、毎月固定で支払われるみなし残業代を12カ月分で計算しますが、実際の残業時間に応じて変動する残業代は含まれません。
賞与は、賞与算定基準額に賞与支給月数を乗じて算出します。各種手当には、住宅手当、家族手当、資格手当などが含まれ、これらを12カ月分で計算します。
一方、理論年収に含まれないのは、交通費、変動する残業代、出張手当、インセンティブなどです。交通費は税務処理上非課税となるため、理論年収には含めません。実績に応じて変動するインセンティブや歩合給も、金額が確定しないため、多くの場合は理論年収に含まれません。
理論年収の認識が企業と人材紹介会社の間でズレていると、想定していた手数料と実際の請求額が大きく異なるトラブルが発生します。契約時に、どの項目を理論年収に含めるのか、明確にすり合わせておくことが重要です。
人材紹介サービスと他の採用手法の費用比較

人材紹介サービスの手数料を検討する際、他の採用手法と比較してコストパフォーマンスがどうなのかを理解しておくことは重要です。それぞれの採用手法には特徴があり、状況によって最適な選択肢は変わります。ここでは、主要な採用手法との費用比較を通じて、人材紹介サービスの位置づけを明確にします。
求人広告との比較
求人広告は、採用手法の中でも最も広く利用されている方法の一つです。費用は掲載する媒体やプラン、掲載期間によって大きく異なりますが、一般的には1回の掲載で15万円から50万円程度が相場となっています。
求人広告の特徴は、掲載課金型の料金体系です。つまり、求人を掲載した時点で費用が発生し、応募がゼロであっても採用できなかったとしても、支払った費用は戻ってきません。一方で、複数名の応募があり、何名採用しても追加費用は発生しないため、大量採用には向いています。
新卒採用で求人広告を利用する場合、採用シーズンである3月から6月にかけて複数回の掲載が必要になることが多く、トータルの費用は100万円を超えることも珍しくありません。さらに、応募者の選考や面接日程調整、合否連絡といった業務はすべて自社で行う必要があり、人的コストも相当なものになります。
人材紹介サービスと比較すると、1名あたりの採用コストは求人広告の方が低くなる可能性がありますが、採用できるかどうかの不確実性が高いという違いがあります。確実に採用したい、または少人数の採用であれば、人材紹介サービスの方がリスクが低いと言えます。
自社採用サイトとの比較
自社の採用サイトを構築して運営する方法は、長期的に見るとコストを抑えられる可能性があります。採用サイトの構築費用は規模によって大きく異なり、簡易的なものであれば10万円程度から、本格的なものであれば300万円以上かかることもあります。
自社採用サイトの最大のメリットは、一度構築すれば継続的に利用でき、掲載料などのランニングコストが比較的低く抑えられることです。企業の魅力を自由に発信でき、ブランディングにも寄与します。
しかし、知名度が低い中小企業の場合、自社サイトだけで十分な母集団を形成することは困難です。学生が企業名を知らなければ、そもそもサイトにたどり着くことができません。SEO対策やWeb広告を併用する必要があり、結果的にコストがかさむことも少なくありません。
人材紹介サービスは、人材紹介会社が保有するデータベースから直接アプローチできるため、知名度に関係なく採用活動を進められます。特に新卒採用において認知度が低い中小企業にとっては、人材紹介サービスの方が効率的に母集団を形成できる場合が多いのです。
ハローワークとの比較
ハローワークは無料で利用できる公共の職業紹介サービスです。求人の掲載から紹介まで、一切費用がかからないため、採用予算が限られている企業にとっては魅力的な選択肢に見えます。
しかし、ハローワークには新卒採用において大きな課題があります。まず、ハローワークを積極的に利用する新卒学生の数が限られていることです。多くの学生は、就職情報サイトや大学のキャリアセンター、企業の採用サイトを通じて就職活動を行っており、ハローワークを第一の選択肢とする学生は少数派です。
また、ハローワークでは民間の人材紹介サービスのような、きめ細かなマッチングや企業と学生の間に入った調整業務は期待できません。求人票の作成から応募者対応、選考プロセスの管理まで、すべて自社で行う必要があります。
ハローワークは費用をかけずに採用活動を行える点では優れていますが、新卒採用で十分な成果を上げるのは難しいのが実情です。人材紹介サービスと併用することで、採用の可能性を高めるという使い方が現実的でしょう。
採用代行サービスとの比較
近年、採用活動そのものを外部に委託する採用代行サービスの利用も増えています。採用代行サービスは、母集団形成から選考、内定者フォローまで、採用プロセス全体を支援するサービスです。
採用代行サービスの料金体系は多様で、月額固定型、業務量に応じた従量課金型、成果報酬型など、サービス提供会社によって異なります。月額固定型の場合、月15万円から50万円程度が相場となっており、最低契約期間が設定されていることが一般的です。
人材紹介サービスとの大きな違いは、採用代行サービスは人材の紹介そのものは行わず、企業の採用活動を支援する点です。母集団形成は企業が行う求人広告や自社サイトを通じて行い、その後の選考プロセスを代行します。
一方、人材紹介サービスは人材の紹介そのものが主要なサービスです。採用が成功するまで費用が発生しないため、初期投資を抑えたい企業や、採用の確実性を重視する企業には向いています。
新卒採用において、学生とのコミュニケーションや内定者フォローに強みを持つ採用代行サービスを活用することで、内定辞退率を下げる効果が期待できます。人材紹介サービスと採用代行サービスは必ずしも対立するものではなく、状況に応じて組み合わせることで、より効果的な採用活動が実現できます。
人材紹介サービスを利用する際のコスト管理のポイント
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人材紹介サービスを効果的に活用し、コストを適切に管理するためには、いくつかの重要なポイントがあります。手数料の相場を把握するだけでなく、契約内容の確認や事前のすり合わせを徹底することで、想定外のコストやトラブルを避けることができます。
複数の人材紹介会社を比較検討する
人材紹介サービスを利用する際は、1社だけでなく複数の人材紹介会社を比較検討することが重要です。料率は人材紹介会社によって異なり、同じ条件でも5%から10%の差が生じることがあります。
比較する際は、単に料率だけでなく、人材紹介会社が得意とする領域や業界、保有している学生データベースの規模、過去の実績なども考慮すべきです。特に新卒採用では、人材紹介会社によって強みを持つ大学群や専攻分野が異なるため、自社が求める人材層と合致しているかを確認する必要があります。
また、返還金規定の内容も比較ポイントの一つです。保証期間の長さや返還率は会社によって異なるため、早期離職のリスクを考慮して、より有利な条件を提供している会社を選ぶことが賢明です。
複数社を比較することで、手数料の相場感を把握でき、交渉の材料にもなります。年間の採用予定人数が多い場合や、継続的な取引を前提とする場合は、料率の優遇を交渉する余地もあります。
理論年収の定義を明確にする
手数料トラブルの多くは、理論年収の認識のズレから生じます。契約前に、理論年収にどの項目を含めるのか、企業と人材紹介会社の間で明確にすり合わせておくことが極めて重要です。
特に注意が必要なのは、固定残業代や各種手当の扱いです。企業側は固定残業代を含めずに理論年収を計算していたのに、人材紹介会社は含めて計算していたというケースでは、想定よりも高額な請求が来ることになります。
契約書には、理論年収の計算方法を具体的に記載してもらうか、採用予定のポジションについて事前に理論年収のシミュレーションを行い、双方で合意しておくことが望ましいです。曖昧なまま進めると、採用成功後に揉める原因となります。
新卒採用の場合、初任給が基準となるため比較的シンプルですが、職種別採用で給与が異なる場合や、地域手当などがある場合は、それぞれのケースについて事前に確認しておきましょう。
支払いタイミングとキャッシュフロー管理
人材紹介サービスの手数料は、入社後に一括で支払うのが一般的です。新卒採用の場合、4月に複数名が一斉に入社すると、翌月に多額の手数料請求が集中することになります。
たとえば、5名の新卒社員を採用し、1名あたりの手数料が150万円だった場合、5月に750万円の支払いが発生します。これは企業のキャッシュフローに大きな影響を与える可能性があるため、事前に資金計画を立てておく必要があります。
請求のタイミングや支払期日は人材紹介会社によって異なるため、契約時に必ず確認しましょう。場合によっては、分割払いに対応してくれる会社もあります。特に中小企業にとって、数百万円単位の支払いを短期間で行うのは負担が大きいため、支払条件の交渉も検討すべきです。
また、採用人数が当初の計画より増えた場合や、予想以上に早期に採用が決まった場合も、予算オーバーやキャッシュフロー悪化のリスクがあります。採用計画と連動して、手数料の支払い計画も柔軟に見直せる体制を整えておくことが重要です。
返還金規定の詳細を確認する
返還金規定は、早期離職が発生した際の企業のリスクを軽減する重要な仕組みです。契約前に、返還金規定の詳細を必ず確認しましょう。
確認すべきポイントは、保証期間の長さ、期間ごとの返還率、返還金の対象外となる条件です。保証期間は一般的に90日から180日ですが、新卒採用では入社後の定着率が中途採用より低い傾向があるため、できるだけ長い保証期間が設定されている方が安心です。
ただし、保証期間が長すぎると、人材紹介会社側の営業担当者が自社の案件を優先しなくなる可能性もあります。人材紹介会社の担当者は、成約後の一定期間を経てインセンティブが確定するため、保証期間が長い案件よりも短い案件を優先する傾向があるためです。
返還金の対象外となる条件も重要です。企業都合による解雇や、本人の病気や怪我、家族の介護といったやむを得ない理由による退職は、返還金の対象外とされることが多いです。どのようなケースが対象外になるのか、契約書で明確にしておきましょう。
また、返還金の請求手続きについても確認が必要です。退職が発生した際に、どのような書類を提出すれば返還金を受け取れるのか、返還までにどの程度の期間がかかるのかを把握しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
新卒採用で人材紹介サービスを活用するメリット

新卒採用において人材紹介サービスを活用することには、多くのメリットがあります。特に人手不足に悩む中小企業にとって、限られたリソースで効率的に優秀な人材を確保するための有力な手段となります。ここでは、新卒採用特有のメリットについて詳しく解説します。
初期費用ゼロで採用活動を開始できる
人材紹介サービスの最大のメリットは、初期費用がかからない点です。求人広告のように掲載料を先払いする必要がなく、採用が成功するまで一切費用が発生しません。
特に新卒採用では、求人サイトへの掲載や会社説明会の開催、採用パンフレットの制作など、多くの初期投資が必要になりがちです。しかし、これらに費用をかけても、必ずしも採用に成功するとは限りません。応募がゼロだった、内定を出したが全員に辞退された、といったリスクも存在します。
人材紹介サービスであれば、採用できなかった場合の金銭的リスクがないため、採用予算が限られている中小企業でも安心して利用できます。複数の採用手法を並行して進める際にも、人材紹介サービスをリスクヘッジとして組み込むことで、採用の確実性を高められます。
採用要件に合った学生を厳選して紹介してもらえる
人材紹介サービスでは、企業が求める人物像やスキル、価値観に合った学生を、人材紹介会社が厳選して紹介してくれます。求人サイトのように不特定多数の応募者が来るわけではなく、ある程度マッチング精度が高い状態でスタートできるのが特徴です。
新卒採用において、中小企業が抱える大きな課題の一つが、自社に合った学生を見つけることの難しさです。大手企業と比べて知名度が低く、求人サイトに掲載しても応募が集まりにくい、あるいは応募者の質にばらつきがあるといった問題があります。
人材紹介会社は、登録している学生一人ひとりと面談を行い、志向性やスキル、就職活動の状況を把握しています。そのため、企業の採用要件を伝えることで、マッチング精度の高い学生を推薦してもらえるのです。
特に、特定の専攻や資格を持つ学生、特定の地域での就職を希望する学生など、ピンポイントで人材を探したい場合には、人材紹介サービスが非常に有効です。
書類選考や面接調整の工数を削減できる
人材紹介サービスを利用することで、採用活動にかかる事務作業の工数を大幅に削減できます。特に新卒採用では、数十人から数百人規模の応募者対応が必要になることもあり、担当者の負担は相当なものになります。
人材紹介会社は、応募書類の事前スクリーニング、面接日程の調整、合否連絡、内定後の条件交渉など、採用プロセスにおける様々な業務を代行してくれます。企業側は、面接や最終的な採用判断といったコア業務に集中できるため、少人数の採用チームでも効率的に採用活動を進められます。
中小企業では、採用担当者が他の業務を兼務していることが多く、採用活動だけに時間を割けないという課題があります。人材紹介サービスを活用することで、本来の業務を圧迫することなく、採用活動を並行して進められるのです。
内定辞退を防ぐためのフォローが期待できる
新卒採用において最も大きな課題の一つが、内定辞退の問題です。せっかく内定を出しても、学生が他社を選んでしまい、採用計画が狂ってしまうことは珍しくありません。
人材紹介会社は、内定から入社までの期間も学生との接点を持ち続け、企業と学生の間に入ってフォローを行います。学生が抱える不安や疑問に対して、第三者の立場からアドバイスを提供することで、内定辞退のリスクを低減できます。
特に中小企業の場合、大手企業と比較されて内定辞退されるケースが多いため、人材紹介会社による客観的なフォローは非常に価値があります。企業の魅力を改めて伝えたり、入社後のキャリアパスについて説明したりすることで、学生の入社意欲を高める効果が期待できます。
新卒採用で人材紹介サービスを利用する際の注意点
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人材紹介サービスには多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。特に新卒採用においては、中途採用とは異なる特有の課題も存在します。これらを理解した上で、適切に人材紹介サービスを活用することが重要です。
複数名採用の場合はコストが高くなる
人材紹介サービスは成功報酬型のため、採用した人数分だけ手数料が発生します。1名あたり150万円の手数料だとすると、5名採用すれば750万円、10名採用すれば1500万円が必要になります。
大量採用を計画している場合、求人広告や採用代行サービスの活用の方がコストを抑えられる可能性があります。たとえば、求人サイトに50万円で掲載し、10名採用できれば、1名あたりのコストは5万円です。人材紹介サービスと比較すると、大幅にコストを削減できます。
ただし、求人広告は応募が集まらないリスクや、応募者の質が低いリスクもあります。確実性とコストのバランスを考え、複数の採用手法を組み合わせることが現実的です。たとえば、採用目標の半数は求人広告で、残りは人材紹介サービスでカバーするといった戦略が考えられます。
新卒採用で複数名の採用を予定している場合は、人材紹介会社と料率の交渉を行うことも検討すべきです。年間10名以上の採用を前提とすれば、標準の料率から数パーセント下げてもらえる可能性もあります。
自社に採用ノウハウが蓄積されにくい
人材紹介サービスを利用すると、採用プロセスの多くを外部に委託することになるため、自社内に採用ノウハウが蓄積されにくいというデメリットがあります。
特に新卒採用では、どのような学生が自社に合うのか、どのような訴求ポイントが効果的なのか、面接でどのような質問をすべきかといったノウハウは、長期的な採用活動を通じて培われるものです。人材紹介サービスに依存しすぎると、これらのノウハウを自社で持てないまま、毎年外部に頼り続けることになります。
将来的に採用を内製化したい、自社の採用力を高めたいと考えている企業にとっては、この点は大きな課題です。人材紹介サービスを利用する場合でも、担当者から積極的にフィードバックをもらい、なぜこの学生を推薦したのか、どのようなポイントでマッチングを判断したのかを学ぶ姿勢が重要です。
また、求人広告やダイレクトリクルーティングなど、自社が主体となって進める採用手法も並行して実施することで、ノウハウの蓄積を図ることができます。人材紹介サービスはあくまで補完的な手段として位置づけ、自社の採用力を高める取り組みも並行して進めるべきです。
人材紹介会社との連携がうまくいかないとミスマッチが起こる
人材紹介サービスの成否は、人材紹介会社との連携の質に大きく左右されます。企業側が求める人物像や社風、仕事の内容を正確に伝えられていないと、マッチング精度が低下し、ミスマッチが発生します。
特に初めて取引する人材紹介会社の場合、自社のことをほとんど理解していない状態からスタートするため、丁寧なコミュニケーションが不可欠です。求人票に記載されている情報だけでは伝わらない、企業の雰囲気や価値観、求める人材の具体的なイメージを、時間をかけて共有する必要があります。
また、紹介された学生が期待と異なる場合は、なぜそのような判断をしたのかをフィードバックし、次の紹介に活かしてもらうことが重要です。人材紹介会社も試行錯誤しながらマッチング精度を高めていくため、企業側からの情報提供とフィードバックが鍵となります。
定期的に打ち合わせの機会を設け、採用状況や市場動向について情報交換することも効果的です。人材紹介会社は多くの企業と接しているため、他社の採用トレンドや学生の動向について有益な情報を持っています。これらを活用することで、自社の採用戦略をブラッシュアップできます。
保証期間終了後の早期離職リスク
返還金規定による保証期間は一般的に3カ月から6カ月程度です。この期間内に退職した場合は手数料の一部が返還されますが、保証期間を過ぎてから退職された場合は、手数料は一切返還されません。
新卒採用では、入社後1年以内の離職率が中途採用よりも高い傾向があります。入社してみたら仕事内容が想像と違った、社風が合わなかった、他にやりたいことが見つかったなど、様々な理由で早期離職が発生します。
保証期間が終了した直後に離職されると、企業にとっては手数料を支払ったにもかかわらず、人材を失うという最悪の結果になります。このリスクを避けるためには、入社後のフォロー体制を整えることが重要です。
定期的な面談を実施し、新入社員が抱える悩みや不安を早期にキャッチアップすることで、離職の兆候を見逃さないようにしましょう。また、研修制度やメンター制度を整備し、新入社員が職場に馴染みやすい環境を作ることも、早期離職を防ぐ有効な手段です。
中小企業が新卒採用で成功するための採用戦略

新卒採用において、中小企業は大手企業と比べて知名度や待遇面でハンディキャップを抱えることが多いです。しかし、適切な戦略を立てることで、限られた予算とリソースの中でも優秀な人材を確保することは可能です。ここでは、中小企業が新卒採用で成功するための具体的な戦略を紹介します。
人材紹介サービスを活用する場合でも、自社の採用戦略を明確にしておくことが重要です。どのような人材が必要なのか、どのような魅力を訴求するのか、採用後のキャリアパスはどうなるのかを整理し、一貫性のあるメッセージを発信することが、学生の心を掴む鍵となります。
また、人材紹介サービスだけに頼るのではなく、複数の採用手法を組み合わせることで、採用の成功確率を高めることができます。求人サイト、自社採用サイト、大学との連携、リファラル採用など、様々なチャネルを活用し、多面的に学生にアプローチすることが効果的です。
特に中小企業にとって有効なのが、学生視点での採用活動です。大手企業のような豪華な会社説明会や高額な初任給で勝負するのではなく、現場の社員と直接話せる機会を作ったり、実際の仕事を体験できるインターンシップを実施したりすることで、企業のリアルな姿を伝えることができます。
学生は、企業の規模や知名度だけで就職先を選ぶわけではありません。自分が成長できる環境か、やりがいを感じられる仕事か、人間関係は良好かといった点を重視する学生も多いです。中小企業ならではの風通しの良さや、若手でも責任ある仕事を任せてもらえるチャンス、経営陣との距離の近さといった強みを、効果的に訴求することが重要です。
人材紹介サービスを利用する際にも、こうした自社の強みを人材紹介会社にしっかりと伝え、それを理解してくれる学生を紹介してもらうことが、ミスマッチを防ぎ、定着率を高めることにつながります。
学生人事が提供する新しい採用支援の形

新卒採用において、手数料の高さや内定辞退の多さに悩む中小企業は少なくありません。従来の人材紹介サービスでは、1名あたり100万円を超える手数料が発生するため、複数名の採用を予定している企業にとっては大きな負担となります。
そこで注目されているのが、月額制の採用支援サービスです。学生人事は人材紹介サービスのような成功報酬型ではなく、定額制のため、採用人数が増えても追加費用が発生しません。
学生人事の最大の特徴は、学生が企業と伴走して採用活動を支援する点です。学生目線でのコンテンツ制作やインターンシップの企画運営、内定者フォローといった、新卒採用において特に重要な領域に強みを持っています。
学生自身が企業の魅力を発信することで、同世代の就活生に対して説得力のあるメッセージを届けることができます。また、学生ならではの感覚で、就活生が知りたい情報や不安に感じるポイントを理解しているため、効果的なコンテンツ作りが可能です。
内定者フォローにおいても、学生スタッフが年齢の近い立場から内定者とコミュニケーションを取ることで、内定者が抱える不安や疑問に寄り添ったサポートができます。内定辞退率の低減に大きく貢献できる点は、従来の人材紹介サービスにはない強みと言えるでしょう。
採用コストを抑えながら、学生目線での採用活動を実現したい企業にとって、学生人事は新しい選択肢となります。人材紹介サービスの手数料が負担に感じている企業や、より学生に寄り添った採用活動を展開したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。
【新卒採用に”学生人事”という選択を】
現役大学生の就活経験を活かし、
採用成功まで伴走型でフルサポートする
新卒採用支援サービス『学生人事』。
これまでにない革新的な視点で、
応募者の増加・内定辞退率の低下・定着率アップ
に大きく貢献します。
まとめ

人材紹介サービスの手数料は、採用する人材の理論年収に対して30〜40%程度が相場となっています。新卒採用の場合、中途採用と比べてやや高めの料率が設定される傾向があり、35〜40%程度が一般的です。
手数料の算出方法には届出制手数料と上限制手数料の2種類がありますが、ほとんどの人材紹介会社は届出制手数料を採用しています。理論年収に料率を乗じるだけのシンプルな計算式ですが、理論年収に何を含めるかについては、企業と人材紹介会社の間で事前にしっかりとすり合わせておく必要があります。
また、人材紹介サービスだけに頼るのではなく、求人広告や自社採用サイト、採用代行サービスなど、複数の採用手法を組み合わせることで、採用の成功確率を高めることができます。それぞれの手法の特性を理解し、自社の状況に合った最適な組み合わせを見つけることが、新卒採用成功への近道です。
中小企業が新卒採用で成功するためには、大手企業とは異なる戦略が必要です。学生目線での採用活動を展開し、企業のリアルな姿を伝えることで、自社に合った優秀な人材を確保できます。人材紹介サービスを利用する際にも、自社の強みを明確にし、それを理解してくれる学生を紹介してもらうことが、ミスマッチを防ぎ、定着率を高める鍵となります。